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SES・派遣・請負の契約形態の違いとメリット・デメリット

2019年7月15日

ITエンジニアのSES・派遣・請負の契約形態の違いとメリット・デメリット

SES・派遣・請負ってよく聞くけど、違いがいまいち分からないですよね。

「分かりにくい仕組み作るなよ!」と言っちゃいそうです。

この記事では、そんな分かりにくいIT業界の契約形態とそれぞれの違い・メリット・デメリットを解説します。

IT業界の契約形態の知識は、ITエンジニアとして働く方や転職する方が知っておいて損はない知識です。

SES・派遣・請負の知識が曖昧あいまいな方は、一度、整理して押さえておきたいですね。

SES契約とはIT業界で主流の契約形態

SES契約とは

SESはシステムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)のことで、頭文字をとってSESと呼ばれています。

IT業界でのシステム構築にはかかせない契約形態で、多くのITエンジニアがSES契約で働いています。

IT業界のITエンジニア人口分布を取ると、SESで働いているITエンジニアがもっとも多いのではないでしょうか。

SES・派遣・請負の特徴と3つの契約形態の違い

SES・派遣・請負契約の違い

ITエンジニアの契約形態である

  1. SES契約
  2. 派遣契約
  3. 請負契約

の特徴やそれぞれの契約形態の違いについて解説します。

働く場所 指示系統 報酬対象
SES 客先(クライアント) 自社(雇用主) 労働時間・スキル
派遣 客先(クライアント) 客先(クライアント) 労働時間・スキル
請負 自社(雇用主) 自社(雇用主) 成果・納品物

SES契約は客先常駐・報酬対象は「労働時間」

SES契約とは?図解で解説

SES契約は、ITエンジニアがクライアント企業に常駐して労働時間やスキルの価値を提供します。

そして、クライアント企業はITエンジニアの労働時間やスキルに対して報酬を支払います。

時間や労働力が報酬対象になるので、極端な話ITエンジニアはクライアント企業で成果が出せなくても報酬は支払われます。

ITエンジニアがどんな成果を上げたかは関係なく、働いた時間が報酬対象となります。

SESの契約期間は企業によってさまざまですが、契約更新時には以下のポイントで契約が見直されます。

  • 成果を出せないエンジニアは契約延長されない
  • 成果を出したエンジニアは契約金額(月の単価)がUP

また、SES契約は派遣業の届け出がなくてもできることから「グレー」などと言われることもあります。

ですが、IT業界ではSES契約が主流で多くのエンジニアがSESで働いています。

よく派遣契約と混同されがちですが、派遣契約とは違います。続きで紹介します。

派遣契約とSES契約の大きな違いは指示命令の権限

派遣契約の図解

派遣契約もIT業界で使われる契約形態ですが、ITエンジニアにおいては現在はSES契約の方が主流になってきています。

派遣契約とSES契約の違いは、指示・命令権限です。

  • SES・・・自社(雇用主)に指示命令権限がある
  • 派遣・・・客先(クライアント企業)に指示命令権限がある

とはいえ、現場レベルではSES契約と派遣契約の違いが厳密に管理されていないことも多々あります。

クライアント企業がSESのエンジニアに「契約時に伝えていなかった仕事」「休日出勤」を依頼する場合、雇用主に許可をもらう必要がありますが「なぁなぁ」になっていることもあります。

休日出勤の依頼はきちんと雇用主に伝え許可をもらう必要があります

これができていないクライアント企業も存在しています。あまり大々的には言えないことですが。

そして派遣契約を結ぶには、派遣業の届け出をおこなう必要があります。

これも、届け出が必要ないSES契約との明確な違いです。

請負契約は自社で開発・報酬対象は「成果・結果」

請負契約の図解

請負契約はSES契約・派遣契約とはまったく違って報酬対象は「成果・結果」です。

契約時に結んだ「成果物」「納期」に対する結果を出すことが使命で、そのためにITエンジニアがどこで働こうが、どんな時間の使い方をしようがクライアント企業には関係ありません。

ITエンジニアは自社で開発をおこないますし、指示系統ももちろん自社にあります。

当然、結果がすべてなので、納品したシステムに不具合があったり納期に間に合わない場合には、責任が問われます。

また、クライアント企業から「仕様が変わったので追加でシステム改修してほしい」言われても従う必要はありません。

契約時になかった作業は、追加で費用請求します。

SES契約のメリット・デメリット

SES契約のメリット・デメリット

SES契約のメリットとデメリットを紹介します。

似た契約に派遣契約がありますが、派遣契約のメリット・デメリットもSES契約と同等と考えて問題ありません。

(現在のITエンジニアの契約はSES契約が主流です)

SES契約のメリット

世間ではSES契約=悪と決めつける風潮がありますが、案外メリットも多いです。

SESは正社員雇用

SES=非正規社員と勘違いされることもありますが、SES契約で働いているITエンジニアは正社員です。

客先に常駐して働くことから、このような勘違いが生まれると思いますが、SESは正社員雇用です。

成果がなくても報酬が支払われる

SESの報酬の対象は労働時間です。

「成果が出せない」「与えられたタスクがこなせない」「成果物に不具合」があっても、クライアント企業から雇用主へ報酬は支払われます。

もちろん給料ももらえます。成果が出せなくても給料がもらえるのは一般的な会社員と同じですね。

成果物に対する責任を問われることがない

SESで常駐している期間に

開発したプログラムに不具合があって、システム障害が発生した・・・

もし、こんな事態が発生したとしてもSESのITエンジニアに責任はありません。

「結果」ではなく「労働力」が成果対象であり責任対象です。

責任はSESエンジニアを管理しているクライアント企業の社員にあります。

当たり前ですが、だからといって失敗してもOKというわけではないです。

大規模なシステム構築に携われる

SESの客先は、大手企業になることが多く、そうなると必然的に大規模システム構築に関われます。

大規模システム構築は多数のSES契約のITエンジニアが集まって開発をおこなうことが多いです。

関わる人が多くなると、ひとりひとりが担当するのはごく一部になりますが、とにかく大規模システム構築に関わってみたい人にとっては悪くないのではないでしょうか。

SESで常駐している大手企業に転職の可能性

あまり多い話ではないですが、SESで何年も常駐していると客先から声がかかることもあります。

何年も常駐しているということは、優秀で何度も契約延長されているということです。

そんなSESのITエンジニアは、もはや客先の社員よりシステムに詳しくなっています。

なくてはならない存在(いなくなられたら困る)という状況から、客先に転職するケースもあります。

ITエンジニアの実績が得られる

プログラマーでもシステムエンジニアでもどちらでもよいですが、IT業界でエンジニアとして働いたという実績が付きます。

未経験からIT業界の大手に行くのは難しいので、大手に行くための土台作りとして「SESのエンジニア経験」は有効です。

転職では学歴や資格よりも実績が重視されるので、SESで実績を作ってからステップアップする人は多いです。

職場を変えられる

SESのデメリットでもありメリットでもあるのが、職場を適度に変えられることです。

SESのITエンジニアは短くて3ヶ月~通常は半年~1・2年くらいの期間常駐することが多いです。

(長い場合だと10年を超える期間常駐していることもあります)

良い職場に常駐できれば良いですが、もちろん合わないこともありますよね。

社風が合わない
プロジェクトの進め方が合わない
別業種のシステムに興味出てきた
シンプルに飽きた
スキルアップできない
生理的に嫌いな人がいる

こういう悩みが出た時、職場の変更をクライアント企業の社員がやろうとすると転職するしかないですが、SESのITエンジニアは気軽に職場を変えれます。

SESであればクライアント企業と契約を切って、別のクライアント企業に行くだけです。

人脈が増える

SESは職場を変えながら働くので、必然的に人脈も増えていきます。

「SESで常駐しているITエンジニア」「クライアント企業の社員」との人脈が知らず知らずのうちに広がっていきます。

もちろん人脈を活用するのはあなた次第ですが。

SESは意外と安定している

人材不足のIT業界においてSESはなくてはならない存在です。

大手企業のシステム開発には必ずSES契約のITエンジニアが携わっています。

100億をこえるような銀行のシステム開発にも多くのSESのITエンジニアが関わっています。

現在のSES業界は売り手市場でクライアント企業がITエンジニアを探すのに苦労することもあります。

急に仕事がなくなることはないでしょうし、最悪、客先で働けない期間があっても、雇用主から給料は支払われます。

SES企業で働く場合、客先で働けない期間の処遇について必ずチェックしておいてください

人材不足で売り手市場のSESは意外と安定しています。

SES契約のデメリット

意外とメリットも多いSESですが、もちろんデメリットもあります。

働く上ではメリットよりデメリットを理解する方が大切かもしれません。

常駐先が変わるたびに常駐先企業に慣れないといけない

SESの一番の特徴は、職場が定期的に変わることです。

せっかく職場の雰囲気や仕事の進め方に慣れてきたところで契約が終了し、また別の職場へ行って一から慣れないといけません。

動かずまったり働きたい人にはSES契約の職場が変わる特徴はデメリットになります。

キャリアアップしにくい環境

SESのITエンジニアで一番多い職種はプログラマーです。他にはテストをおこなうテスターなどもあります。

所謂いわゆるシステム開発工程の下流工程といわれる工程を担当するのが大半です。

SEはクライアント企業の社員が担当しPGはSESのエンジニアが担当する構図です。

IT業界のキャリアアップの王道である「PG⇒SE⇒PL⇒PM」の道を上っていきたくても自分ではどうしようもできない状況が多いです。

なので、SEやPMにキャリアアップするために転職する人も多いです。

給料が上がりづらい

給料が上がりづらいことは、キャリアアップしにくい環境であることと関係あります。

IT業界の一般的な「PG→SE→PL→PM」のキャリアアップのレールに乗りにくいです。

SESだとどうしても下流工程ばかりを担当させられることが多く、キャリアアップしづらく給料も上がりにくいです。

請負契約のメリット・デメリット

IT請負契約のメリット・デメリット

請負契約のメリット・デメリットを紹介します。

SESとは違う請負のメリット・デメリットを押さえておきます。

請負契約のメリット

SESとは違う請負のメリットを紹介します。

自社で開発ができる

請負契約であれば基本的に仕事は自社に持ち帰ります。

自社で成果物となる設計書やソースコードを作成します。

職場が変わることに抵抗感を持つ人は多いと思いますが、請負契約なら職場を変えずに「慣れた環境」で作業できます。

無茶苦茶な仕様変更に対応しなくてよい

システム開発でありがちな、開発途中で「やっぱりこの機能もいる」「この機能のここを変えて」とユーザーから要求されること。

請負契約でクライアント企業から受注している受注企業は、これに対応する義務はないです。

どうしても対応する場合は、納期の調整・追加請求の調整をおこないます。

請負契約は、比較的安全にシステム開発をおこなうことができます。

請負契約のデメリット

SESと比較した請負のデメリットを紹介します。

成果物に対する責任がある

SESでは成果物に対しての責任を問われることはありませんが、請負契約となると成果に対しての報酬になるので、当然「成果・結果」に対して責任があります。

成果物に不具合があったり納期が守れなかった場合には責任が問われます。

開発コストが見積以上にかかると赤字になることも

請負契約は初めに結んだ契約金額以上の売上はありません。

よって、見積もり以上の開発コストがかかると、赤字になってしまう可能性があります。

請負契約では、効率的に精度の高い成果物を作る必要があります。

SESはキャリアアップの足掛かりにする

SESはキャリアアップの足掛かり

SESはIT業界で主流の契約方法になり、ITエンジニアがSESで働くことは当たり前になりました。

SESは意外とメリットも多く、悪いことばかりではないということを紹介しました。

ですが、やはりSES企業とクライアント企業(大手SIer・大手メーカー)に比べると収入の面で見劣りすることが大半です。

収入の面でステップアップするなら転職が近道です。

SES企業から「大手メーカー系SIer」「大手ユーザー系SIer」に転職する人はたくさんいます。

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IT業界全体が売り手市場でもあり、SESで実績を作ったプログラミングスキルのあるSEの需要は多いです。

もちろん、いろんな現場で仕事ができるSESのITエンジニアとして有意義にPGやSEを楽しんでいる人はいます。

ですが、もしあなたがそうではないとして。

収入アップ・キャリアアップを目指すなら、SES契約で実績を作りながら転職活動し理想に近づいていきましょう。

SESは初心者・未経験からでも入りやすく、IT業界で実績が作れるのでうまく利用したいですね。

まとめ:SES・派遣・請負の契約形態を理解して有効に使う

SES・派遣・請負の契約形態を理解して活用する

ITエンジニアの契約形態である

  • SES
  • 派遣
  • 請負

の特徴・違い・メリット・デメリットを紹介しました。

それぞれの契約形態を理解して自分が損にならないように活用していくことが重要です。

未経験からSESで実績を積んで大手転職の足掛かりに利用する
プログラミングが好きで環境変化が嫌なので、請負の開発会社で開発をする

今後もしばらくIT業界のこの契約形態の流行りは変わらないでしょう。

その中であなたが搾取さくしゅされないよう、うまく立ち回っていきたいですね。

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