- なぜ小学生にプログラミング教育なんてさせるの?意味あるの?
- 興味はあるけど知らない。実際のところどんな教育内容なの?
という疑問をお持ちの親御さん方がおられると思います。
当記事では、小学校プログラミング教育必修化の疑問について、プログラミングを知らない方にも分かりやすく解説していきます。
当記事を読み終えた頃には、プログラミング教育必修化について理解が深まり、ママ友や家族に教えられるようになっていると思います。
プログラミング必修化はいつから?
2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されます。
まずはじめに、2016年に中央教育審議会での議論が取りまとめられて公表されました。
そのあと2017年に学習指導要領が改訂され、2018年~2019年の準備期間を経て、2020年度から全面実施となります。
プログラミング必修化の理由とねらい
プログラミング学習が必修化される理由と、必修化の「ねらい」を深掘りしていきます。
コンピューターが魔法の箱ではないことを知る
コンピューターが当たり前にあって、コンピューターなしでは生活できない世の中です。
便利で楽しくて、なくてはならない存在となったコンピューターは、その仕組みを知らない人からすると「魔法の箱」のように見えます。
もちろんコンピューターは魔法の箱ではなく、プログラムによって制御されています。
子供の頃からコンピューターの仕組みを知ることで、コンピューターに興味を持たせ、コンピューターの働きを、よりよい生活にするために生かそうと意欲的に学習するねらいがあります。
プログラム的思考(論理的思考)を養う
プログラミング的思考とは
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
出典:文部科学省
プログラムはいくつもの処理(命令)が組み合わさって動いています。
複雑に見えるプログラムでも、細かく分解するとひとつひとつの処理は意外とシンプルです。
プログラムを目的通りに動かすためには、ひとつの処理(命令)を繰り返したり、適切な手順に並べたり、条件によって使う処理を切り替えたりする必要があります。
コンピュータを動作させるための手順(例)
① コンピュータにどのような動きをさせたいのかという自らの意図を明確にする
↓
② コンピュータにどのような動きをどのような順序でさせればよいのかを考える
↓
③ 一つ一つの動きを対応する命令(記号)に置き換える
↓
④ これらの命令(記号)をどのように組み合わせれば自分が考える動作を
実現できるかを考える
↓
⑤ その命令(記号)の組合せをどのように改善すれば自分が考える動作
により近づいていくのかを試行錯誤しながら考える出典:文部科学省
これは将来どんな職業に就いても役に立つ思考となります。
目的を達成するために、物事を細分化して道筋を立てて、適切な手順・適切な方法を考えて選択する力を子供のころから養います。
物事を解決するためには必ず必要な手順があることに気付く
プログラミング教育で、それまで「魔法の箱」と思っていたコンピューターが、プログラムによって制御されていることを知ります。
どんな物事にも必ず理由があって、問題を解決するためには必要な手順があることに気付かせます。
そうすることで、物事を分解し本質を探る力を養うことに繋がります。
可能性が広がる
コンピューターがプログラムで動いていることを知ると
- もっと便利にしたい
- もっと活用したい
- プログラムを深く知りたい
- 自分でも作ってみたい
とプログラムに興味を持ち、楽しみながら主体的に勉強していく子供も今よりたくさん出てくることが期待されます。
今でも、起業したり自分のサービス・アプリを作って販売している高校生がいますが、幼少期からプログラミングに触れ楽しさを知ることで、裾野が広がります。
結果、意欲的に学習に取り組み、若い世代から自立して活躍する人や、将来活躍できる子供が増えるきっかけにもなりえます。
どんな仕事でもコンピューターを活用する力が必要
プログラムを知っていれば、仕事を効率化するちょっとしたツールやアプリを作ることが可能になります。
エクセルへのデータ入力作業を自動化するツールなどは、プログラムで簡単に作成できます。
また、プログラムを作らないにしても、どんな職業に就いてもコンピューターを活用する力は必要です。
さらに今後は、今以上にコンピューターを有効活用する力が重要になっていくことは確実です。
幼少期からプログラムやコンピューターに触れておくことは、どんな将来にも役に立ちます。
海外の学校でもプログラミング教育導入が進んでいる
日本の小学校にあたる初等教育で、すでにプログラミング教育がおこなわれている、または近々プログラミング教育を必修化する国は
- イギリス
- ハンガリー
- ロシア
- エストニア
- オーストラリア
- フィンランド
- カナダ
などがあります。
中学校・高校で必修化・選択科目としてプログラミングがある国を入れると、かなりの数の国になります。
海外でもプログラミング教育が当たり前の時代となっています。
こういった諸外国の事情やIT人材不足の問題を考えると、日本のプログラミング教育実施も自然の流れといえます。
プログラミング必修化の教育内容
プログラミング学習必修化の理由が分かったので、次は実際どんな教育内容になるのかを見ていきます。
プログラミング学習と聞くだけで抵抗を示す方もおられると思いますが、内容を知るとイメージが変わると思います。
プログラミング教育の分類について
国語、算数、理科、社会・・・という教科の中に「プログラミング」という新しい教科が追加されるわけではありません。
では、どうやってプログラミング教育を実施していくか。
文部科学省がプログラミング教育を取り入れるタイミングについてA~Fの6つのカテゴリに分けています。
プログラミング学習活動分類
- A分類: 学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの
- B分類: 学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの
- C分類: 教育課程内で各教科等とは別に実施するもの
- D分類: クラブ活動など、特定の児童を対象として、教育課程内で実施するもの
- E分類: 学校を会場とするが、教育課程外のもの
- F分類: 学校外でのプログラミングの学習機会
A分類とB分類は既存の教科の中でプログラミングを取り入れます。
たとえば、算数の授業の中で「正多角形を書くプログラムを作る」とか、理科の時間に「プログラミングでLEDの点灯と消灯を制御することを体験する」とかです。
C分類は「プログラミングの基礎を学ぶ」、「各教科とは独立させた課題(例:迷路を動くロボットプログラム)」などA分類とB分類をおこなうための準備としてプログラムの基礎を学んだり、単純にプログラムの楽しさに気付けるような授業を指しています。
D分類は、特定の子供に対してだけ、クラブ活動でプログラム学習を実施します。
E分類とF分類は地域や企業・大学と協力したりしながら課外授業でプログラミング体験をおこないます。
上記のような場面でプログラミング教育を各学校が工夫して適切に取り入れていくことが望まれています。
現段階では、プログラミングという教科書があって、テストを実施するようなことはありません。
「プログラミング」という新しい授業の追加ではなく、「教育にプログラミングの要素を取り入れる」と認識しておけば間違いありません。
教材はビジュアル型プログラミング言語
プログラミング言語と聞くと、テキスト(英字)が羅列した難しそうなイメージを持つのが一般的だと思います。
ですが、小学校のプログラミング教育で主に用いるのはビジュアル型プログラミング言語です。
ビジュアル型プログラミング言語は、図形や命令が書かれたアイコン・ブロックをマウス操作でドラッグ&ドロップするだけです。
主な操作はマウスでおこない、キーボードは使わないので、パソコンに不慣れな人でも直感的に操作ができます。
ビジュアル型プログラミング言語
上記は「Scratch」というマサチューセッツ工科大学が無料で公開しているビジュアルプログラミング言語です。
テキスト型ではなくビジュアル型のプログラミング言語を使うことで、「プログラミング的思考≒論理的思考力」を抵抗なく学ぶことができます。
Scratchにはいろいろな面白いプログラムが公開されているので触ってみると面白いですよ。
プログラミング教育の具体例
ここではひとつ、実際におこなわれたプログラミング教育を紹介します。
よりプログラミング教育のイメージが湧くと思います。
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1正多角形の性質を知る
まずは、定規、三角定規、分度器を使って正三角形や正四角形・正六角形を書きます。
ここで、正多角形は辺の長さと内角の大きさが同じであることを再確認します。
次に正三十六角形といった角の多い多角形を手書きします。
角の数が多くなると、手書きは大変で時間が掛かってしまうし、キレイに書けないことを認識させます。
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2プログラム(Scratch)を使って正多角形を書く
次に実際にプログラムを使って正多角形を書いていきます。
生徒には下のようなワークシートを配布します。
ワークシート
これを、実際にプログラム(Scratch)を使って書いていきます。
正多角形をプログラムで書くには
- ペンを下す
- ペンを決まった長さ動かす
- ペンの角度を変える
- ②と③を繰り返す
以上の処理が必要であることに気付きます。
そして、目的の多角形を作るにはどんな命令を何回繰り返せばいいのかを、生徒同士で話し合って試行錯誤しながら進めていきます。
step
3作ったプログラムの発表と振り返り
自分たちで作ったプログラムを紹介しあいます。
振り返りでは、生徒たちが以下のような学びを得ています。
- プログラムを使うと角の多い多角形も正確に書くことができた
- 辺の長さ、角度、繰り返しだけで書けることに気付いた
- 定規もいいけどパソコンだと早く書くことができた
命令を分解して組み立てると目的が達成できることや、プログラムの正確さ・早さに気付きます。
この教材以外で、他に似たようなものだと、NHKの教育番組で使われた教材「プログラムを使って正多角形を書こう」などがあります。
こういった直感的に作れるプログラムはたくさん公開されています。
ですので、コンピューターへの抵抗なく、楽しみながらプログラミング的思考を身に付けていくことができます。
このように「ビジュアルプログラミング言語は子供の思考力・問題解決力を鍛えるのに最適」です。
以下の記事では、Scratch以外のビジュアルプログラミング言語も紹介していますので合わせてご覧ください。
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ビジュアルプログラミング言語は子供の思考力・問題解決力を鍛えるのに最適
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プログラミング必修化のQ&A
子供がプログラミングスキルを習得する必要がありますか?
プログラミング言語(コーディング)を覚えることを目的としているわけではありません。おもにプログラミング的思考(論理的思考力)を養うことが目的です。
パソコンやプログラムに詳しくない先生がどうやって子供に教えるのでしょうか?
プログラミングを教えるのではなく、プログラミング的思考を教えます。
プログラミング的思考や教材は「小学校を中心としたプログラミング教育 by 未来の学びコンソーシアム」を参考に、学校の先生独自のノウハウや経験を使って、無理なく徐々に教育していきます。
タブレットやパソコンが十分揃っていない学校はどうすればよいでしょうか?
文部科学省が2018年度から5ヵ年計画で整備を進めています。地方財源を使って環境整備をおこないます。
まとめ:プログラミング教育の今後に期待
小学校でプログラミング教育が必修化されますが、まだその内容や取り組みは手探り状態なところがあります。
ですが、プログラミング教育で論理的思考力を学んだりコンピューターに触れることは、どんな職業に就いても役に立ちます。
意味のある教育だと思うので、今後、試行錯誤しながらプログラミング教育を成熟させていってほしいです。
大学や企業が積極的に協力できると、システムエンジニアの自分としても面白くなりそうです。