
IT業界で働いていると「SES→常駐先に引き抜き」の話を見たり聞いたりします。
中小の企業から大企業へ転職できる可能性がある引き抜きはおいしいですよね。
当記事では
- 引き抜きされるどんな人なんだろう
- 引き抜きって法律的に問題ないのかな
- 引き抜きされた人の体験談も知りたいな
といった疑問についてまとめました。
引き抜きは、狙ってできるものではありませんが、引き抜きされるためのコツは「自分の仕事」「転職」にも役立つはずなので、普段から意識しておいて損はないです。
常駐先にメリットがあるエンジニア引き抜き
エンジニアの引き抜きは常駐先の企業にとってメリットが大きいです。
常駐先の企業が得られるメリットは以下の通りです。
常駐SE・プログラマーの引き抜き採用は失敗がない
一般的な中途採用は「履歴書」「筆記試験」「面接」で能力を判断しますが、それだけでその人が100%入社後に活躍できる保証は得られないですよね。
新卒採用に比べて少ないとはいえ、中途採用にも少なからずギャンブル要素があります。
ですが、引き抜きは「仕事っぷりや人柄」を近くで見てきたエンジニアの採用となるので、入社後に「あれ?違う?」となることは、ほぼありません。
即戦力になることが確実に分かっている採用が引き抜き採用です。

引き抜きで得られる常駐先企業のメリットは多いです。
- 一緒に仕事して能力を判断済み
- 社内環境に順応した状態で採用
- 人柄も分かっている
- 教育コストが不要
これらメリットを見ると、引き抜き採用で失敗することは、ほとんどないことが分かります。
引き抜きには費用が掛からない
通常、中途採用する際は転職サイトや転職エージェントを使います。
もちろんこれらはタダではなく「転職サイトへの広告掲載料」や「転職エージェントへ支払う仲介料(採用者の年収の30%)」が掛かります。
一方、引き抜きには一切費用が発生しません。
費用を掛けず、ほぼ失敗のない採用ができるのは企業にとってはおいしい話ですね。
常駐先からの引き抜きは法的に問題なし
常駐先からの引き抜きは法律的に問題なく、違法ではありません。
憲法22条で「職業選択の自由」が認められていますからね。
とはいえ「やりすぎ」な引き抜きは問題になることも。
以下のような「役員の引き抜き」や「大量引き抜き」が原因で会社の経営に影響を及ぼすような場合は別です。
- 引き抜かれた人の会社での地位(役員)
- 一斉に大量の引き抜き
- 引き抜きが原因で会社に損害を及ぼす
引き抜きで裁判にまで発展した有名な事件に「東京コンピュータサービス事件」というものがあります。
派遣会社の東京コンピュータサービスの営業部次長が、在職中に新会社の設立を計画。在職中から退職後まで設立した新会社に社員を勧誘。一斉に大量の社員が退職した。裁判になり営業部次長が敗れ、損害賠償を支払うことになった。
上記のような極端な例の当事者になれば話は別ですが、まぁ関係ないでしょう。

もううちに来て長いよね?
なくてはならない戦力だよ
うちに来ない?
このような「一般的」な引き抜きで、裁判沙汰になるようなことはまずないです。
常駐先から引き抜かれるのはどんなエンジニア?
実際、どんなエンジニアが引き抜きされるのか5つのポイントに絞って紹介します。
スキル
スキルが高い「仕事ができる人材」と思われることが最低条件になります。
- プロジェクトを上手く回して結果を出す
- 納期より少し早く完了させる
- 不具合のないプログラムを作る
- 障害発生時に迅速に解決する
- 気配りができる
普段から上記のようなことを積み重ねていくと「スキルがある」「仕事ができる人」と周りから評価されるでしょう。
ですが「不具合がないプログラムを開発し続ける」ことは不可能に近いですよね。
なので、少しミスしたくらいでは低評価にならないようにするのがポイントです。
頑張ればできる「納期の前倒し」「障害発生時の迅速対応」「気配り」等をかけ合わせて少しずつ信頼を積み上げていくことが大事になってきます。
態度
「無茶なスケジュール」「適当な仕事の依頼」思わず態度に出てしまいそうになることもあると思いますが、グッとこらえます。
面倒な仕事は自社の社員でなく、常駐のSEやプログラマーに投げられることが多いので、そういうものだと割り切れる人は強いです。
態度に出したところで、改善されることはほとんどありませんしね。
反論する場合は、感情的にならず論理歴に相手を納得させられるようにしたいですね。
指示された以上の仕事をする心がけ
依頼された仕事を依頼された通りこなしていると「いくらでも替えがきく人」になります。
任された仕事の中で「漏れはないか?」「この通りやればどうせ失敗するだろ?」と疑いながら、仕事を進めるのがコツです。
与えられた仕事をこなすことも、もちろん大事ですが「何か一つでも付加価値を付け加えられることがないか」考えながら行動できる人は強いです。
これを少しずつ積み上げて「この人に任せておけば期待以上のものが返ってくる」と思わせれば勝ちです。
もちろん簡単ではないですが、今後もずっと使える(必要な)スキルになるので、訓練だと思って試してみてはいかがでしょうか。
指示以上のことを提案されると「文句あるのか?」と気分を害する人もいるので「余計なお世話なら無視してください。すみません。」のような一言を付け加えておけばOKです(笑)
システム開発の現場で使われる仕様書には絶対に漏れがあります。
「やりたいこと」しか書かれていない仕様書通りに開発を進めて、落とし穴に嵌まった経験はありませんか?
僕は何度もあります・・・
「仕様書や設計書の落とし穴」をどんどん見つけて改善提案しちゃいましょう。
属人化
サブシステム、部分的な領域に関して、社員ではなく常駐エンジニアが最も理解が深い状態になってしまったケースです。
- この案件はあの人に任せておけば心配ない
- あの人に聞かないと分からない
- 抜けられると困る
という属人化された状況になれば、引き抜きの誘いを受ける可能性も高まるでしょう。
前節の「スキル」「嫌な表情を見せない」「言われた以上の仕事」を積み上げていけば、結果的に属人化された状況になるかもしれません。
協調性
いくらスキルが高くて仕事ができると思われても、常駐先の人が一緒に仕事をしたいと思わなければ引き抜きの声を掛けられることはありません。
「良い人」になる必要はありませんが、当たり障りのない人である必要はあります。
以下のようなことができれば勝手に協調性がある人と勘違いされます(笑)
- 仲の良い社員を作る
- 飲み会にも参加して顔を覚えてもらう
- タバコ(吸う人は)休憩で上役と雑談
飲み会の参加とか面倒に感じる方も多いとは思いますが。
ITエンジニア引き抜き体験談
以下の体験談は僕の身近で起こった引き抜き体験談です。
※僕自身の体験ではないです
超大手電機メーカからの引き抜きを断った話
体験談①
超大手メーカー系SIerでSEとして常駐していました。
常駐先ではプロジェクトリーダーを任されていました。
「飲み会参加」「タバコルームでの上役との雑談」等も苦手意識がなく、自然と常駐先の社員とも仲良くなれていました。
元々、コミュニケーションに苦手意識はなく得意な方だったので気楽でした。
このコミュニケーションを活かして、プロジェクトリーダーとしてもうまく立ち回れていたと思います。
数年間の常駐を経て、よくしてもらっていた社員の方から「うちの入社試験を受けてみないか?」と誘われました。
入社できれば大幅な給与アップは確実でした。
ですが、入社するなら給与以外のことも知っておく必要があります。
仲の良い社員に、常駐先の社員の内情を詳しく聞くようになりました。
- 入社試験は超大作の論文を書かなければいけない
- プロジェクトが完了するたびに役員向けに結果報告会があって詰められることも
- プロジェクトが失敗すると地方の支社に飛ばされて戻ってこれない
すると上記のような自分にはデメリットと感じる部分もあることが分かりました。
家族がいる自分にとって「転勤の可能性」はリスクがあると感じ、お誘いはお断りしました。
そして、誘いを受けたことがキッカケで、これまであまり考えていなかった「転職」を考えるようにもなりました。
「このままSESを続けるか、安定した会社で腰を据えて働くか」・・・行動するなら少しでも若いうちがいいよな。
その後、半年経たずに転職エージェント(マイナビエージェント×IT)を使ってメーカー系SIerへ転職を決めました。
ユーザー系SIerからの3度目の誘いで入社を決意した話
体験談②
零細のSES会社からユーザー系のSIerへ常駐していました。
零細の会社は名前だけ借りていたようなものなので、実質フリーのようなものでした。
仕事内容は、設計から開発・保守までなんでもこなしていました。
小規模なシステムを一人で全部担当していたこともあります(笑)
自分で言うのもなんですが「確実に」「納期より早く」「割り込み作業にも真摯に対応」していました。
1度目に誘いは「年齢も若く責任を問われない気軽な立場で仕事ができること」と「実質フリーだったので収入も社員の方より貰っていた」という理由からお断りしました。
2度目の誘いも同じような理由でお断りしました。
そして、引き抜きの話を受けることを決断した3度目のお誘いです。
3度目の誘いを受けた時は、年齢もそこそこいっていましたし、今の常駐先を離れた後に別の常駐先でまた一から築き上げていくのが「しんどいかも」と思うようになっていました。
常駐先は「これを狙っていたのか」という、絶妙なタイミングで誘ってきました。
タイミングも相まって、決断に時間は掛かりませんでした。
筆記試験等もなく、役員と形式上の面接(内定は決まっているので世間話や雑談メイン)だけで入社が決まりました。
常駐時代は、責任を問われない立場で仕事が出来ていたので気楽でしたが、社員になると責任がのしかかってきてしんどい時もあります。
ですが、「福利厚生」「社会的安心感」「キャリア」などトータルで考えると、引き抜きの話を受けてよかったと思っています。
まとめ:引き抜きは「運」「結果論」期待して待つものではない
いくらあなたが常駐先で実績を上げ、信頼されていても引き抜きされる可能性は低いと考えていいです。
めぐり合わせ・運要素が9割
あなたが優秀で常駐先が社員に欲しいと思っていても、会社間の取引の都合上、声を掛けられないパターンもあります。
また、あなたが常駐先で即戦力になれる人材であっても、中途採用に力を入れていない会社であれば引き抜きされることはありません。
引き抜きは狙ってできるものではなく「めぐり合わせ・運」要素が9割です。
「引き抜きされる人はどんな人?」で紹介したようなことを普段から取り組んでおけば、引き抜きのチャンスが巡ってくる可能性はありますが、狙って出来るものではありませんし簡単ではありません。
常駐先の社員を狙うなら自分で動く
「常駐先のような会社」で働きたいなら、引き抜きを待つのではなく自分から動いた方が手っ取り早いです。
転職エージェントに登録して、現在の常駐先や過去に常駐していたことのある会社が求人を出していないか調べてみるのも良いでしょう。
可能性の低い引き抜きをただ待っているより、効率的なことは間違いありません。
当然ですが、引き抜きで希望の会社に入った人より、転職で希望の会社に入った人の方が圧倒的に多いです。
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