経済産業省が2017年にIT関連企業の実態調査をおこなっています。
調査結果は「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」という資料で報告されているのですが、この調査がなかなか面白かったので紹介します。
ITエンジニア(SE)になろうと検討中の人や就職活動中の人は、ご覧になってみてください。
この記事では、その調査結果のひとつである「教育機関の情報系専門教育に対する意見・要望」というIT関連企業に対するアンケート結果のトピックにしぼって紹介します。
IT企業の情報系専門教育に対する意見と要望のアンケート結果
以下、似顔絵下のコメントと▼下のコメントの意味合いです。
- 似顔絵・・・「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」より引用したアンケート結果
- ▼・・・個人的な感想です
情報系の学生を採用しても大きなメリットはないと感じている

新卒で大学の情報系の学生を採用するケースが多くありますが、入社時にプログラミング能力を身に着けている学生の割合は、当社で採用した実績でみると3割以下だと感じています。
情報系以外で採用した学生より多少知識がある程度で、情報系の学生でも即戦力にはならないので採用する側から見てメリットが余り感じられません。
もっとプログラミング能力を高めるような教育をしても 良いのでは?と思います。
情報系の学生とその他の学生(文系含め)は、入社直後は少し情報系の学生にアドバンテージがある場合が多いですが、研修や実践を積んでいくと学生時代のアドバンテージはほぼなくなります。
当たり前ですが、学生時代に情報系学生だったかは関係なく、入社してからどう頑張るかですね。
即戦力がくればラッキーくらいの気持ちで、育てていくしかないですね。
プログラミング能力を高める教育も増やしてよいと思いますが、大学は職業訓練校の位置づけではないのでなかなか難しいかもしれません。
教育で習った内容が役に立つことはほぼない

無意味、とまでは言わないが、役に立つことは稀。
技術のみ先行で教え、できる気にさせてしまっているのと言う印象。
実際、教育で習った内容が役に立つことはほぼなく、実践の中で覚えていくことがほとんどなのに、出来るつもりでいるため、うまくできなかったとき・ミスをしたときに必要以上に挫折感を味わっている印象。
うまくできなくて当たり前です。
情報系の学生も文系の学生も、入社してから実践で覚えていけば問題ありません。
逆に、情報系学生を情報系以外の学生と同じ待遇で採用しているのに、「情報系の学生だからこれくらいできて当然」と思ってしまう企業があれば問題ですね。
数年間、何を学んでいたのだというレベルの人が多い

ITの専門学校や学部を出ていても数年何を学習していたんだというレベルの人が多すぎる。
高専のような即戦力を世の中は求めているように思うが。
大学は職業訓練校ではなく一般的な教養を学ぶ場となっているので、簡単には変わらないでしょう。
即戦力の高専と、育てていく素材としての学部生という住み分けになっていますね。
国外のIT教育レベルと比較すると残念

2008年にインドの大手IT企業、および大学等の視察に行きましたが、大学の情報系授業内容のレベルの高さや、企業側の学生採用方針(即戦力の人材しか取らない)を聞いて、IT先進国のインドと日本との違いに驚き、日本のIT技術の将来を憂いたのを覚えています。
学生のレベルを高めると共に、産学連携を強く推進すべきと考えます。
インドの技術者と仕事をしたことがありますが、ものすごく優秀な人でした。
インドでは幼稚園からIT教育が始まり中学生くらいになると、学生のほぼ全員が簡単なプログラミングが書けるようになっています。
この差は簡単には埋まらないでしょう。
学生のレベルより先に、産業側のITレベルを上げないといけませんね。
稀な技術は企業では重要視するが教育機関では重要視しないことが多い

教育機関では理論的な教育を中心に行われているが、事業者としてはサーバーやルーターなどの実務教育も更に充実させてほしい。
理論的な教育と実務教育のバランスをもう少し実務教育よりにするのは賛成です。
理論的な教育が役に立つのは教育や研究の道へ進む人です。
一般的な会社でITエンジニアとして働く人が圧倒的に多いので、実務教育の比重をもう少し上げてみてもよいとは思います。
プログラミングやOSの扱いなど実践教育に力を入れてほしい

基本情報の資格は保有しているが、専門知識が身についていない情報学部系の学生が見受けられる。
プログラミングやUNIX系OSの扱いなど実践的な教育に力を入れてほしいと感じます。
情報系学生が学生時代に取得しておく必要のある資格(基本情報や応用情報)と同等の扱いで、実践的な力が試される資格試験を作るしかないかもしれません。
そうしても結局、資格を取るためだけの学習になりそうですが。
実践的な教育(プログラミング学習やサーバー構築、アプリ開発)は実験的にでも少し増やしてみて欲しいですね。
実践教育がないため現場では使えないことが多い

実践教育が無く、障害やトラブルに対する知識経験が少ないため、現場では使えない事が多い。
又、希な技術については企業としては他社との差別化の為重要視しているが、教育機関では流して終わり程度で役に立たないことが多い。
障害やトラブルに対する知識経験は、会社に入って経験して身に付けていけばまったく問題ありません。
稀な技術も会社に入ってから、必要であれば業務の中で身に付けていけばOKだと思います。
資格取得がメインになり実務能力がされていないことが多い

資格取得などに重きをおき、より実践的な教育がされていないことが多い。
とはいえ、情報系の学生で学生時代に資格のひとつも取っておかないと、学生時代何を勉強していたんだとなりますので、普通に就職する人は資格は取得しておきましょう。
学生は、資格取得と実践スキルをアピールできる実績があればカンペキですね。
情報系学部生が学生時代にやっておきたいこと
- 情報処理技術者試験の資格取得
- プログラミング学習の実績つくり
情報処理技術者試験の資格取得
資格だけ持っていて実践力がないといった意見がありました。
たしかに資格を持っていても実践に役に立つことはほぼないです。
しかし、情報系学部生にとって情報処理の資格取得は大切なことです。
理由は以下のとおりです。
- 情報系学部生で情報処理資格を持っていないと、実践力以前に勉強してきたか疑われる
- 企業によっては昇進や昇格の際に資格保持が条件になっていることがある
資格はJAVAやORACLEなどのベンダー系資格の方が実践で役に立ちます。
ですが、まずは一般的な情報処理技術者試験の
- 基本情報処理技術者
- 応用情報処理技術者
あたりを取得しておけばよいでしょう。
プログラミング学習の実績つくり
企業は教育機関(学生)により実践的なスキルを求めています。
学生時代に独学で身に付けられる実践的なスキルといえば、プログラミング学習です。
ただ、「学生時代にプログラミング学習しました」と企業面接で伝えるだけでは信憑性がありません。
学習してそれなりにスキルを身に付けたということを、客観的に評価できる指標が必要です。
具体的には以下のようなものがあればよいです。
- プログラミングスクールの修了実績
- オリジナルのアプリ・サービスの開発実績
プログラミングスクールを修了しておけば客観的に認められる実績になります。
さらにオリジナルのアプリやECサイトなどのモノ作りの実績と、それを紹介することができれば、学生としてはカンペキです。
プログラミングは、プログラミングスクールの「TechAcademy」が20種類近くあるコースから好きなコースを選べるのでおすすめです。
また、TechAcademyでは「オンラインブートキャンプ 無料体験」という1週間のプログラミング無料体験もできます。
まとめ:IT企業の求めるスキルと自分のスキル差を埋めるには独学が近道
理論的な教育をする情報系学部と、即戦力・実践力を求める企業でズレがありました。
企業は高専や職業訓練校などのような、より実践で役に立つことを学生時代に学んでおいてほしいと思っているようです。
メモ
すべての企業がそうというわけではなく、今回の経済産業省の調査結果に取り上げられた回答がそうだったという意味です
「企業が求めるスキルも学生時代から身に付けておきたい」という学生は、まずはプログラミング学習から始めてみるのが一番のおすすめです。